フリーランスになって4年半が経ちました。
理学療法士を辞めて、Webマーケター・セールスライターとして独立して、案件をこなして生活してきました。会社員時代より収入は増えましたし、時間の自由も手に入りました。
ただ、ある時期からこれ以上は伸びないという感覚がはっきりしてきました。この記事では、その天井の正体を数字で整理します。同じ働き方をしている人には、たぶん心当たりがあるはずです。
結論:天井は「単価 × 時間」という式そのものにある
時間を売る働き方の収入は、この式で決まります。
収入 = 単価 × 稼働時間
単純ですが、この式には逃げ場がありません。伸ばせる変数が2つしかなく、どちらにも上限があるからです。
変数1:稼働時間の上限
まず稼働時間から見ます。
仮に1日8時間、月20日働くとすると月160時間です。頑張って1日10時間、月25日にすれば250時間。これでも1.5倍程度にしかなりません。
しかも実際には、稼働時間の全部が売上になるわけではありません。私の実感では、請求できる時間は全体の6〜7割です。残りは営業、見積もり作成、打ち合わせ、経理、確定申告の準備といった、お金にならない時間に消えます。
月160時間働いても、請求対象は100時間前後。ここを見落として「自分の時給 × 稼働時間」で見込みを立てると、実際の入金額とのギャップに驚くことになります。
そして稼働時間には、体力という別の制約もあります。私は一度、案件を詰め込みすぎて体調を崩したことがあります。そのときに理解したのは、この働き方は自分が壊れると収入がゼロになるということでした。会社員なら有給がありますが、フリーランスにはありません。
変数2:単価の上限
では単価はどうか。
単価は上げられます。私も実際に上げてきました。ただし、ここには市場が決める上限があります。
以下は自分の案件の数字ではなく、わかりやすさのために置いた一般的な数値例として読んでください。
クライアントには予算があり、その仕事に払える金額の相場観があります。相場の2倍を提示すれば、たいてい別の人に発注されます。相場を超えて選ばれるには、「この人でないと困る」という理由が必要で、これを作るには実績と信頼の蓄積が要ります。数年単位の話です。
そしてもうひとつ、見落としやすい問題があります。上げた単価は、次のクライアントでリセットされるということです。
Aさんとの取引で単価を8,000円まで上げても、新しく取引するBさんはその経緯を知りません。Bさんとはまたゼロから交渉が始まります。単価アップは自動的には積み上がらない。ここが資産と労働の決定的な違いです。
数字で並べると見えるもの
実際に計算してみます。時給換算で単価を上げていったとき、月収がどう変わるか。請求可能時間を月100時間とします。
| 時給換算 | 月収(100時間) | 年収 |
|---|---|---|
| 3,000円 | 30万円 | 360万円 |
| 5,000円 | 50万円 | 600万円 |
| 8,000円 | 80万円 | 960万円 |
| 10,000円 | 100万円 | 1,200万円 |
数字だけ見ると悪くありません。時給1万円まで行けば年収1,200万円です。
ただし、ここには3つの但し書きがつきます。
ひとつめ。これは毎月100時間分の仕事が途切れずにある前提です。実際には閑散期があり、案件終了の谷があります。年間を通して稼働率100%は、まず維持できません。
ふたつめ。この収入は働き続けている間だけです。休んだ月はその分そのまま減ります。病気、家族の事情、単純に疲れた、どれが起きても直撃します。
みっつめ。表の下の行に到達するまでに何年かかるかという問題です。単価は交渉すれば上がるものではなく、実績を積んで信頼を得た結果として上がります。数年単位の話になります。
気づいたのは「単価アップは天井を上げる行為」だということ
ある時点で理解したのは、単価を上げても構造は何も変わっていないということでした。
単価が上がれば、収入は増えます。生活は楽になります。でも「自分が動かないと止まる」という性質は1ミリも変わっていません。天井の高さが変わっただけで、天井があること自体は同じです。
そして天井が高くなるほど、そこに到達するための負荷も上がります。単価の高い仕事は要求水準も高い。楽になるわけではありません。
じゃあどうするのか
式に戻ります。
収入 = 単価 × 稼働時間
この式の中で戦っている限り、上限からは逃げられません。抜けるには式そのものを変えるしかない。つまり、自分の稼働時間と収入が比例しない収入源を作るということです。
具体的には、一度作れば繰り返し売れるもの、あるいは自分が対応しなくても回るものを持つ。商品、コンテンツ、継続課金、紹介による継続報酬。形はいろいろありますが、共通しているのは売れる数が増えても作業量が増えないという性質です。
ここまでは、たぶん多くの人が知っています。問題は、じゃあ何から手をつけるのかという部分です。私はここで盛大に遠回りしました。商品を先に作ろうとして、売る相手がいなくて止まりました。
正しい順番については「自分が動かないと止まる収入」から抜ける方法に詳しく書きました。結論だけ言うと、商品より先に、見込み客の連絡先を集めるのが先です。
仕組み化の型を分類して整理したものは労働型ビジネスを仕組みに変える3つの型にあります。
正直に書いておくこと
私はまだ、この式から抜けきれていません。今も収入の大半は受託です。
だからこの記事は「抜けた人の成功談」ではなく、抜けようとしている途中の記録です。ただ、天井の正体が式にあると理解できたことは、自分にとって大きな転換でした。それまでは「もっと頑張れば」「もっと単価を上げれば」と考えていたので、努力の方向がずれていました。
もうひとつ正直に書くと、受託が忙しいと仕組み作りは完全に止まります。目の前に締切のある仕事があると、そちらが優先されるからです。これは今も解決していません。対策として週1回、時間を先に確保するようにしていますが、守れない週もあります。
それでも、動かせる時に少しずつ動かすしかないと思っています。式の中で消耗し続けるよりは。
よくある質問
Q. 受託をやめて仕組み作りに専念すべきですか
おすすめしません。収入が途切れた状態で作る仕組みは、焦りが混じって的外れになります。私も受託を続けながらやっています。
Q. 単価を上げるのは無駄ですか
無駄ではありません。時間あたりの収入が増えれば、同じ生活費をより少ない稼働時間で稼げるようになり、空いた時間を仕組み作りに回せます。単価アップは目的ではなく、仕組み作りの時間を捻出する手段として位置づけると意味が出ます。
Q. 元手がなくても始められますか
ツール代の月1万円前後があれば始められます。大きな初期投資が必要なものではありません。
まとめ
- 時間を売る収入は「単価 × 稼働時間」で決まり、両方に上限がある
- 稼働時間のうち請求できるのは6〜7割程度
- 単価は上げられるが、新しい取引先ではリセットされる
- 単価アップは天井を上げる行為で、天井をなくす行為ではない
- 抜けるには、稼働時間と収入が比例しない収入源を作るしかない
- ただし順番を間違えると何年でも足踏みする
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